「ここの花は、ひと晩では育ちゃあせん。」ベンはいいました。「待ってやらにゃあならんのじゃ。ここでちょっと頭をだして、あそこでもうちょっと芽を押し上げて、ある日は葉っぱを一枚のばして、次の日にもう一枚という調子だ。見とるがええ。」
秘密の花園
バーネット 作
山内玲子 訳
岩波少年文庫
これは、「秘密の花園」の一説です。
わがまま放題で育ったメアリに、庭師のベンが言うこのセリフ。子どもの頃は心のフックに引っかからなかったのですが、大人になった時、思わずメモをとった言葉です。
待ってやらにゃあならんのじゃ。
本当は、何でもそうなんだと思うのです。
おいしいものも。
きれいなものも。
こどものことも。
暮らしの日常茶飯事が全て、待つことの連続なのだと思うのです。
かなり以前、アニメ映画の巨匠宮崎駿監督が、こんな風におっしゃっているのを聞いたことがあります。
「児童文学は、やり直しがきく」
まさに、秘密の花園のメアリは、インドから英国へ渡り、人々と接し、庭を花園にすることで、自らを再生して行く。人生のやり直しをする物語です。
もう一度、時を戻すことはできませんが、やり直しをしながら、生きていくことは可能です。
暮らしながら、日々を透き通った目で見つめ、生活に必要な道具も、壊れたらなおすこと。
飽きたから捨てる。
壊れたから捨てる。
いらないから捨てる。
そんなリセットは、あまりにも自己中心的だなぁと思うのです。
リセットではなく、リ・スタートできたらと、日々の暮らしを見つめ直せたら……。
実は我が家の家族ジジも、我が家でリ・スタートを切ったワンコ。
保護犬を引き取り、約1年半が経ちました。
人に捨てられるわけですから、人を信じられなくなってしまい、心に傷を負ったワンコです。
更に、劣悪な環境で育てられていたため、外に一歩も出たことがありません。
小さな物音にも反応し、ビクビクしていました。
トイレのしつけも、成犬で引き取ったため苦労をしました。
いまでは、こんな風に寛いだ姿を見ることができるように。
かけがえないのない、家族の一員になりました。